
日本の歴史と文化が色濃く息づく古都、奈良。
平城京の時代から日本の住まいに欠かせない存在として親しまれてきたのが「畳」です。
正倉院には聖武天皇が使用したとされる最古の畳「御床畳(ごしょうのたたみ)」が保管されており、奈良は畳と非常に縁の深い土地と言えます。
そんな歴史ある奈良にお住まいの皆様にとって、日々の暮らしを支える和室のメンテナンス、すなわち「畳替え」は、住環境を快適に保つための大切な行事です。
いざ畳替えをしようと思ったとき、多くの方が直面するのが「国産の畳表(たたみおもて)」と「中国産の畳表」、どちらを選ぶべきかという疑問です。チラシやインターネットで見かける畳替えの価格には大きな開きがあります。今回は、価格や品質、美しさや長持ちの視点から、その違いについて詳しく解説いたします。
わかりやすい違いは「価格」
まず、最もわかりやすい違いは「価格」です。
現在、日本国内で流通している畳表の過半数は中国産が占めています。中国産は広大な農地で大量生産が可能であり、コストを抑えられるため、国産に比べて安価です。(徐々に国産に近い価格になりつつありますが)
グレードにもよりますが、中国産は国産畳より安価で施工できることが多く、「とにかく一時的にコストを抑えて綺麗にしたい」「賃貸物件の退去修繕である」といった場合には選ばれる傾向にあります。
一方、国産(主に熊本県八代市などを中心に栽培されています)は、農家さんが土壌作りからこだわり、一年という歳月と大変な手間暇をかけて育て上げるため、初期費用は中国産よりも高くなります。
本当の違い・価値がわかる数年後
しかし、畳の本当の価値は「張り替えた直後」ではなく、「数年使った後」の品質に表れます。
その違いは、原材料である「イグサ」の構造そのものにあります。日本の厳しい気候風土の中で、徹底した管理のもとで育った国産のイグサは、一本一本の表皮(皮)が非常に厚く、内部にはスポンジ状の組織がぎっしりと詰まっています。この実の詰まり具合が、畳の「弾力」と「耐久性(長持ち)」を生み出します。表皮が厚いため日常生活での摩擦に強く、表面が剥がれて衣服に付く「ささくれ」が起きにくいのが国産の大きな特長です。
対して中国産のイグサは、成長速度を優先して育てられることが多く、表皮が薄く中身の詰まりもまばらになりがちです。そのため、真新しい時はどちらも同じように綺麗に見えても、数年使用すると中国産は摩擦によってささくれが早く発生しやすく、結果として国産の方が圧倒的に長く快適な状態を保つことができます。
時間と共に感じられる「美しさ」
そして、長年和室で過ごす上で最も実感しやすいのが「美しさ」と「経年変化」の違いです。
新しい畳は青々としていますが、年数が経つにつれて徐々に日焼けし、色が変わっていきます。国産の良質な畳表は、時間が経つと全体がムラなく、艶のある美しい「黄金色(あめ色)」へと変化していきます。それは単なる劣化ではなく、和室に深みを与える美しい経年変化です。一方、中国産の畳表は、い草の質や乾燥工程の違いから、日焼けしていく過程で黒ずんでしまったり、まだらな茶色に変色してしまうことが少なくありません。また、国産い草が持つ、あの心安らぐ「甘く爽やかな香り」も、中国産と比べると持続性や香りの質に大きな違いがあります。
このように、初期費用(価格)だけを見れば中国産に分がありますが、「耐久性(長持ち)」「経年変化の美しさ」「香りの心地よさ」といった品質面では、圧倒的に国産畳が優れています。畳替えには「裏返し(数年後に畳表を裏返して使う)」というメンテナンス方法がありますが、表皮が厚く丈夫な国産でなければ、数年後に綺麗に裏返しができないこともあります。長期的な視点で見れば、長く美しく使える国産畳を選ぶことは、非常にコストパフォーマンスが高い選択と言えるでしょう。
古き良き日本の伝統が日常に溶け込む奈良での畳暮らし。
だからこそ、生活の基盤となる和室には、日本の風土が育てた確かな品質の「国産畳」をおすすめいたします。心地よいイグサの香りに包まれ、年月とともに深みを増す黄金色の畳の上で、ご家族との穏やかな時間を紡いでみてはいかがでしょうか。次回の畳替えの際は、ぜひお近くの信頼できる畳店で、実際に国産と中国産のい草に触れ、その品質の違いを確かめてみてください。
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